2014年9月9〜13日の間,インドネシアのジョグジャカルタで開催されたIAVCEI(国際火山学および地球内部化学協会)のCities on Volcanoes 8 (COV8)国際会議に参加してきました.Cities on Volcanoes国際会議は,IAVCEIのCities and Volcanoes委員会が主体となって2年毎に開催している国際会議で,今年で8回目に当たります(第1回目はナポリ開催).IAVCEI国際会議では主に学術的な研究発表が主体となりますが,COVの方はより火山災害の軽減に関する発表が多く,防災関係者や火山地域に住む地元の方々との交流,アウトリーチ活動も大事にしています.
私は会議に先立つ9月6〜8日には,新たに設立されたIAVCEI Commission on Hazards and Risk主催のワークショップ“Reviewing Hazard Mapping Techniques”にも参加しました.各国の火山ハザードマップについて詳細なレビューを行い,将来的にはIAVCEIからハザードマップ作成に関するガイドラインを公表する計画です.7日はグループに分かれて,ブレーンストーミング会議を行い,ハザードマップの現状や長期予測,短期予測,作成のための各種シミュレーション技術,確率的火山災害予測等について議論を行いました.8日午前には,G-EVER(アジア太平洋地域地震火山噴火リスクマネジメントプロジェクト)で取り組んでいる災害予測支援システムや地震火山ハザード情報システムについて紹介を行いました.比較的好印象で,IAVCEIの本委員会とも連携して行くこととなりました.また,ニュージーランド,コロンビア,チリのハザードマップをG-EVERシステムからリンクして表示できる運びとなりました.
9月8日午後には,シンガポール南洋理工大学にあるシンガポール地球観測所(EOS)が中心となって進めているWOVOdatの会合に参加しました.WOVOdatは,火山観測所のおもに地物関連データを世界標準形式で取りまとめていて,噴火の前兆現象データベースの構築を目指しています.Chris Newhall氏や防災科研の上田氏らが講演を行い,今後のデータベース構築について議論を行いました.現在,G-EVERのハザード情報システムの各火山からWOVOdatの各データベースを参照できる機能を準備中です.
9月8日夕方には,日本火山学会会長の井口氏や防災科研の藤田氏らが発起人となり,Asian Consortium of Volcanologyの旗揚げがありました.アジア地域の若手研究者を中心とするコミュニティーを形成することを目指しています.このコンソーシアムには,フィリピンのPHIVOLCS(フィリピン地震火山研究所), インドネシアCVGHM(インドネシア火山地質災害防災センター), シンガポールEOS, 日本火山学会が参加しています.
Cities on Volcanoes 8国際会議には、約500名の参加者がありました.今回は,インドネシアを始め,アジア各国からの参加が多いという特徴がありました.会議のセッションには,火山のモニタリング,マグマプロセス等の学術的な通常セッションに加えて,メラピ火山,ハザードマップと評価,減災,コミュニケーションの改善,火山と観光,噴火危機への対応,インドネシアセッションなどCOVならではのセッションが多数ありました.当部門の古川氏は,9月10日に,大会前半にリンジャニ火山のポスター発表を行いました.高田氏は,12日にDisaster Risk Reduction Pedagogyのセッションで,アナログ実験によるアウトリーチプログラムの講演を行いました.私はHazard Mapping のセッションで,12日に G-EVERハザード情報システム等に関する講演をおこないました.11日には,メラピ火山周辺の地質巡検があり,2010年噴火の際の泥流や火砕流による被災地,噴火により移転した村の見学などを行いました.13日には,インドネシアの噴火体験者や防災担当者によるプレゼンがあり,メラピ火山,ケールト火山,シナブン火山における防災担当者や噴火体験者との特別セッションがありました.
9月10日夕方には,夜間小集会として,G-EVERが主催となり,”Asia-Pacific Region Earthquake and Volcanic Hazard Mapping Meeting”を開催しました.Renato Solidum所長を始めPHIVOLCSからは3名,CVGHMからは4名の参加があり,参加者は合計14名でした.G-EVERの活動,Titan2Dによる火山災害予測支援システム,ハザード情報システム,CCOP(東南アジア地球科学計画調整委員会)地質情報総合共有システム等(詳細は,https://g-ever.org)の紹介を行い,その後討論を行いました.今後,PHIVOLCS,CVGHMとは密接に連携して,ハザード関連情報の整備を行っていく予定です.
会場が5会場に分かれていて,テーマ的に近い興味深いセッションが平行して開催されていたため,何度も会場を移動する必要がありました.プログラム編成には,もう少し工夫が欲しいと感じましたが,それ以外には問題はなく,インドネシアスタッフによる本会議は大変よく準備されており,各会場の討論も熱心に行われ,大成功だったと思います.再来年2016年のCOV9は,南米チリで開催予定です.
URL: https://citiesonvolcanoes8.com/ (プログラム等はこちらをご覧下さい)
文責 (宝田晋治)