第1回CCOP地質情報総合共有プロジェクト国際ワークショップ報告

1.はじめに

2016年9月20〜22日の3日間の日程で,インドネシアのソロにおいて,第1回CCOP地質情報総合共有プロジェクト国際ワークショップ(The 1st International Workshop on CCOP Geoinformation Sharing Infrastructure for East and Southeast Asia (GSi) Project)が開催された.今回の国際ワークショップは,1年前にバンコクで開催された地質情報総合共有プロジェクトのKick-off Meetingで合意されたものであり,開催に当たっては,インドネシアのGeological AgencyとCCOP事務局に,会場のアレンジ,参加者のロジ等で全面的にご支援を頂いた.全体で47名の参加があった.インドネシアからの参加者が31名と最も多かった.今回はインドネシア(Geological Agency)と日本2名(GSJ:宝田、バンディバス)の他,カンボジア2名(Ministry of Mines and Energy),韓国1名(KIGAM),ラオス2名(Department of Geology and Minerals, Ministry of Mines and Energy),マレーシア1名(Minerals and Geoscience Department of Malaysia),フィリピン2名(Lands Geological Survey Division, Mines and Geoscience Bureau & PHIVOLCS),タイ2名 (Department of Mineral Resources),ミャンマー1名(Ministry of Natural Resources and Environmental Conservation)から参加があった.

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写真1. GSi国際ワークショップ開会式の様子.Geological AgencyのEgo Syahrial新長官による挨拶.右端がRudy Suhendar 地下水・環境地質部門長,2人目がAdichat Surinkum CCOP事務局長.

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写真2. GSi国際ワークショップ参加者の集合写真.

 

2.ワークショップの概要

ワークショップ1日目は,まずCCOP事務局長のAdichat Surinkum氏と,8月にGeological Agency代表に就任したばかりのEgo Syahrial長官による挨拶があった(写真1).全体の集合写真(写真2)を撮影した後,宝田がGSiプロジェクトのこれまでの経緯や進捗,BandibasがGSiのシステムの概要を紹介した.そして,各国の参加者代表から,今後5年間のデータ整備計画,National CoordinatorとData Coordinator, データ整備と各国ポータルサイトの進捗状況,GSiプロジェクトとシステムに対する要望や提言,各国の最近の地質情報の整備状況について講演を行った.

各国からのGSiシステム(図1)への要望としては,下記の様に多数の意見が挙げられた.

(1)メタデータ等のデータフォーマットの統一,(2)モバイルでのデータ提供システムの作成,(3)より使い安いシステムの開発,(4)他のプロジェクト(OneGeology等)との協力,(5)データアップロードは自国のデータのみに限定すること,(6)クイックビューアの改良,(7)アカウントのパスワードを忘れた場合への対応,(8)データ更新やアプリの独自開発等におけるTraining Courseの開催,(9)ハザード解析等を目的としたサイトの開発の検討,(10)データの情報が閲覧画面に更に表示される仕組みの用意,(11)すでに公開中の他のWMSサービスが利用できるように改良,(12) モバイル環境でのズーム機能の拡充,(13)モバイル環境でのコンパスやGPSトラック機能の実装,(14)データダウンロード機能の拡充,(15)システムのバージョン情報管理,(16)閲覧画面で各要素をクリックした際に表示される内容のカスタマイズ機能,(17) CCOPプロジェクトで過去に出版した各種データの掲載.

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図1. CCOP地質情報総合共有システムのデータアップロード及び個別ポータルサイト作成用サイト.(https://ccop-gsi.org/MyPortalCreator/new_main/)

その後,Bandibasによって,GSiデータアップロードサイトを使って,実際に各自が持参したデータを掲載するTraining Courseを開催した(写真3).また,その際のデータの名称の付け方や,メタデータ,キーワード等のルールについて議論を行い,合意内容を確認した.

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写真3-1. 1日目のTraining Courseの様子.Joel Bandibas氏による講演.

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写真3-2. 1日目のTraining Courseの様子.中央が韓国代表のSaro Lee氏.

2日目は,引き続き,BandibasによるTraining Courseが行われた.後半では,Mobileシステムを構築する方法についての実習と質疑も行われた(写真4).15時からは,前日の各国から出されたGSiシステムに関する要望や提言内容を元に議論を行った.

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写真4. 2日目のMobile SystemのTraining Courseの様子.

また,データポリシーの微修正を行い,2016年10月末〜11月上旬のCCOP総会(50周年)で各国のポータルサイト(暫定版)を公開すること,各国はそれまでにポータルサイトを準備することが合意された.さらに,システム開発のためのSystem Development Teamの形成検討,CCOP各国間の協力のため可能な限り分野ごとのWorking Groupの設立検討, PHIVOLCS FaultFinderのような利用促進のためのアプリケーションの作成検討,OneGeology等の他のプロジェクトとの連携検討などが話し合われた.なお,会期中,地震火山災害情報図を会場の後部に掲示し,宣伝を行った(写真5).

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写真5. Geological Agency, Center for Geological Survey, Mapping Division代表のSinung Baskoro氏と地震火山災害情報図について議論している様子.

3日目は,参加者による巡検が行われた.ソロの北にあるジャワ原人の発見地にあるサンギラン博物館を見学した(写真6)のち,ソロの王宮跡の見学などを行った.

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写真6. ジャワ原人発見の地にあるサンギラン博物館を見学.

35th International Geological Congress (第35回万国地質学会議)参加報告

1. はじめに

2016年8月29日(月)〜9月2日(金)の5日間,南アフリカのケープタウンで開催された第35回万国地質学会議(35th IGC)に参加した.会場は,Cape Town International Convention Center (CTICC)であった(写真1, 2).地質調査総合センターからは,佃理事,斎藤(文),宮崎(一),大久保,内田,竹内,宝田,Bandibasの8名が参加した.今回のIGCは全体で約4200名が参加した.南アフリカ,中国,インドから多数の参加者があった.特に中国のCGSからは約100人の参加があった.

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写真1. IGC会場の入り口の様子

 

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写真2. 会場(CTICC)の外観.

2. GSJブース展示

GSJのブース展示では,東アジア地震火山災害情報図を始め,富士山火山地質図,熊本地震の緊急調査結果,南アフリカ鉱物資源調査,3D地盤図,地球化学図のポスター展示の他,ASTER, 土壌汚染リスク,鉱物によるガス吸着のハンドアウトも用意した.さらに,富士山の火山地質図や溶岩流の3D模型の展示を行った.多くの方が興味深く展示の見学に来られた(写真3).特に3D模型の展示は好評であった.GSJパンフやCCOP Stone Heritage Book, 日本の地質史等の配布も行った.毎日平均100名程度の訪問者があった.地震火山災害情報図も好評で,約10名の関係者に配布した(写真4, 5).

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写真3.GSJブース展示の様子.ウズベキスタン地質調査所一行から地質図を寄贈された.

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写真4.GSJブース展示の様子. 地震火山災害情報図も好評であった.

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写真5. アルゼンチンSEGEMARの研究者に地震火山災害情報図を寄贈.

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写真6.展示会場の様子.

3. 学会発表

会期中は,主にGeoinformation,Geohazards,火山関連のセッションに参加した.GeoinformationのSuper Sessionでは,各国の地質情報の整備に関する内容や,GEO, OneGeology, EPOS等のプロジェクト進捗等の内容についての講演があった.GEOでは,代表のBarbara Ryan氏が,オープンなデータ共有が,いかにEarth Scienceの進展や社会にとって重要であるかを示した(写真7). OneGeologyプロジェクトは現在119カ国,138機関,70の地質調査所が参加しており,300以上の地質図が公開されている.来年は10周年にあたり,3D Geologyなどの展開を図っている.EPOS(European Plate Observing System)は,各種の地球科学関連を共有化するプロジェクトであり,2023年までの計画で,ヨーロッパ各国の地質調査機関が連携して,地質関連情報,災害情報,資源関連情報の共有化を目指している(写真8).アジアで我々が進めているCCOP地質情報総合共有プロジェクトと類似したプロジェクトであるが,こちらは,地球物理関連の観測データの共有化にも力を入れている.8月30日には,地震火山災害情報図について口頭発表を行った.Geohazardsのセッションでは,各国の地震,火山,地すべり等の数多くの発表があった.9月1日に,G-EVERの地震火山ハザード情報システム,災害情報図の概要,火山災害予測支援システム,CCOP地質情報共有プロジェクトについて口頭発表を行った.火山関連のセッションでは,アフリカの火山の調査結果等の発表があった.ポスター会場では,熱心な議論が行われた.

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写真7. GEO(Global Earth Observation)プロジェクト代表のBarbara Ryan氏による講演.

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写真8. EPOSプロジェクトのスライド.

なお,会期中のプログラム,講演要旨は,下記のMy IGC Appサイトから閲覧,ダウンロードできる.

https://www.35igc.org/Verso/225/My-IGC-APP-smallbrought-to-you-by-AngloAmericansmall

 

4. 世界地質図委員会(CGMW), IUGS総会等の関連会議

会期中には数多くの関連会議や委員会が開催された.GSJ関係者が参加した会合は下記の通りである.

  •  8月29日18:00-21:00   CGMW Bureau Meeting
  •  8月30日18:00-19:30   CGI Meeting
  •  8月30日19:30-21:00   OneGeology Principal Members Meeting
  •  8月31日9:30-17:30     IUGS Council Meeting
  •  8月31日18:00-21:00   CGMW General Assembly
  •  9月1日8:30-17:15    IUGS Council Meeting
  •  9月1日18:00-20:00  SQS Business Meeting
  •  9月2日17:00-22:00  OneGeology Board Meeting
  •  9月3日9:00-17:00    CGI Meeting

8月29日に世界地質図委員会(CGMW)のBureau Meeting,31日にCGMW総会に地質調査総合センターから佃,宝田の2名で参加した.Bureau Meetingでは,まず委員のメンバー交代の予定が報告された.現在のPresidentであるPhilippe Rossi氏は,次の2018年のCGMW総会で代表を辞め,現在Secretary Generalを務めているManuel Publlier氏が代表に就任する予定である(写真9).その後,2014年からの各subcommissionからの進捗状況が報告された.ヨーロッパ代表のKristine Asch氏は,International Quaternary Map of Europe (IQUAME2500) プロジェクトについて発表を行った.北ユーラシア代表のOleg Petrov氏は,1:5M International Tectonic Map of Arctic (TeMar) プロジェクト等,アフリカ代表のF. Toteu氏は1:10M Seismotectonic Map of Africaと1:10M Geological Map of Arica等,アジア代表のJin Xiaochi氏は,1:5M International Geological Map of Asia (IGMA5000)のデジタルデータ完成,南アメリカ代表のC. Schobbenhaus氏は,1:1M Geological Map of South Americaや1:5M Tectonic Map of South America等(写真10),北中央アメリカ代表のM. Saint-Onge氏は,カナダとUSAのTeMarプロジェクトへの参加等,中近東代表のA. Saidiは1:5M International Quaternary Map of Middle Eastと1:5M International Map of Magmatism of Middle East, 南極地域代表のG. Leitchenka氏はTectonic Map of Antaracticaの改訂版,火成岩及び変成岩マップ代表のR. Oberhansli氏はMetamorphic Map of the Eastern Mediterranean,テクトニックマップ代表のI. Pospelov氏は,1:5M Tectonic Map of Asia, Tectonic Map of Northern-Central-Eastern Asia, 自然災害図代表の佃氏は,Eastern Asia Earthquake and Volcanic Hazards Information Map(東アジア地域地震火山災害情報図: 宝田が詳細を説明), 水文マップ代表のStruckmeier氏は,World Hydrogeological Mapping and Assessment Project (WHYMAP)について紹介を行った.

CGMWでは,今後VISIOTERRAという3Dソフトウェアで,CGMWのマップを閲覧できるようにするとともに,PDFで地質図をダウンロードできるようにする方針であることが決定された.31日の総会では,いくつかの地質図を貼りだすとともに,各国の活動内容を文書として取りまとめた.通常,総会は1日行われるが,今回は会場が確保できなかったとのことで,2時間程度であった.東アジア地域地震火山災害情報図は,CGMWの各委員から,大変詳細に取りまとめられており,素晴らしい成果であるとの評価を頂いた.次回のCGMW総会は2018年2月にパリで開催される予定である.

8月30日には,OneGeologyのPrincipal Member Meetingに内田,宝田,Bandibasの3名で参加した.Mat Harrison氏とTim Duffy氏の司会で,OneGeologyの活動内容,メンバー交代,今後の活動内容,財務状況等の報告,議論が行われた.また,9月2日に開催されたOneGeology Board Meetingには佃理事が参加された.

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写真9. CGMW代表のPhilippe Rossi氏(左)と事務局長のManuel Publlier氏(右)

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写真10. CGMW Bureau Meetingで南アメリカ地域の進捗を発表するC. Schobbenhaus氏

8月30日,9月1日に開催されたIUGS (International Union of Geological Sciences) のCouncil Meeting(総会)では,IUGSの各分野の活動報告が行われた.その中には,G-EVERがIUGS,日本学術会議共に仙台で開催した2013年の2nd G-EVER International Symposium and the 1st IUGS &SCJ International Workshop on Natural Hazardsと,そこで合意されたSendai Agreementの内容も触れられていた.また,8年後の第37回IGCについて,ドイツ・ロシア・トルコ・韓国によるプレゼンテーションがあり,投票の結果,韓国の釜山で開催されることが決定された(写真11).また,次回の第36回IGCは,4年後の2020年3月にインドのデリーで開催される.さらに,IUGSの新役員の立候補と投票が行われた.その結果,会長はQiuming Cheng氏(York大学),幹事長はStanley Finney氏(CSU), 会計幹事は北里洋(東京海洋大),副会長はKristine Asch氏(BGR, 写真12)とWilliam Cavassa氏(Bologna大)が新たに2016-2020の4年間の新役員となった.なお,理事には,Steve Johnston氏(Alberta大),Amel Barich氏(モロッコ)(以上2014-2018年任期),Edmond Nickels氏(GSL), Benjamin Mapani(ナミビア)(以上2016-2020年任期),Silvia Peppolomo氏(イタリア), Thierry Mulder氏(フランス)(以上2018-2022年任期)が選ばれている.

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写真11. IUGS総会でプレゼンを行う韓国代表.

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写真12. IUGS総会で立候補のプレゼンを行うKristine Asch氏(ドイツ地質調査所, BGR).