第10回アジア地震学会(フィリピン・マカティ市)参加報告

第10回アジア地震学会(Asian Seismological Commission 2014)がフィリピンのマカティ市(マニラ首都圏)のDusit Thani Manilaホテルで11月17日から20日の日程で開かれた。現地実行委員会の発表では、21カ国、海外から156人が参加。日本からの参加は20人以上と国別ではフィリピンを除くと最多であったかも知れない。アジア地震学会という名称を用いているが、設立当初からオセアニア諸国も含まれていてオーストラリアやニュージーランドからの参加もあり、それ以外の地域では英国の国際地震センター所長Dr. Storchak、フランスの国際津波情報センターのDr. Laura Kongらのほか珍しくチリからの一般参加者もいた。IUGG会長のインドのDr. Harsh Guptaは体調がすぐれず欠席した。大会の運営は、フィリピン火山地震研究所がRenato Solidum Jr.所長、Bartolomr Bautista 副所長をはじめ全所的にあたっていた。財政的には、マカティ市などの支援を主に、日本地震学会も一部支援した。

開会式の様子

開会式の様子

基調講演では、Dr. Kennett(オーストラリア大学)が、構造と巨大地震の震源特性の関係を、Dr. Emile Okal(米国Northwestern大学)が、津波検知・観測の160年について、Dr. Shu-Kun Hsu(許樹坤、台湾国立中央大学)が、マニラ海溝とテクトニクスについて、Dr. Renato Solidum Jr.(フィリピン火山地震研究所・所長)がフィリピンの自然災害軽減活動についてを、それぞれ発表した。そのほか、個別の発表では、ミンダナオ島のフィリピン断層のセグメント評価、ネパール・カトマンズのリスク評価、マニラ首都圏の地震災害リスク評価、ルソン島北部の緊急被害評価システム、2013年フィリピン・ボホール地震M7.1の詳細、その周辺の海底地下構造探査結果、ヒマラヤ地区の地下構造、ブータンでの新しい地震観測網展開などが報告された。ボホール地震では震源域周辺が石灰岩地帯であったため、多くの陥没現象が見られたことが報告されていた。このような例は珍しいので大変興味が持たれた。エクスカーションでの現地巡検が取りやめになったのは残念であった。今回はこれまでのアジア地震学会では無かった「Volcano Seismology」というセッションが初めて設けられ、火山関係の発表も行われた。小生の発表は、「Seismic Monitoring Observations and Data Analysis Product」のセッションで「The characteristic of successive earthquakes」と題する発表を行った。イランの参加者が発表でSeis-PCを使った図を数枚示していたので嬉しかった。また、産総研OBの衣笠善博氏(地震予知総合研究振興会)は、マニラ東南部の断層での水準測量を2005年以来継続して行い、この断層が鉛直方向にクリープしている可能性が高いことを指摘していた。ここ数年はボランティアで観測を継続しているということであった。

今回は中国人の参加が極めて少なく、台湾やシンガポールからの中国人はそれなりにいたが、中国大陸からは中国地震局中国地球物理研究所の名誉所長の陳運泰氏(Chen Yuntai、AOGS会長)だけだった。彼に理由を尋ねると「政治的な環境が悪いので中国人がフィリピンへ来るのは大変危険なのだ。私は国際学会の役職についているから仕方なかった。」と教えてくれた。確かに中国は、フィリピンやベトナムと南シナ海の領有権問題で近年特に激しく対立しているので反感を持たれているようだ。

会場の入口でユネスコが、NOAA/NGDCのデータで作った図3種「Significant Earthquakes 2150B.C.to A.D. 2013」,「Tsunami Source 1610 B.C. to A.D.2014 from Earthquakes, Volcanic Eruptions, Landslides, and Other causes」,「Significant Volcanic Eruptions 4360 B.C. to A.D.2013」を展示していたので1セット貰って来た。

大会最終日にLOC委員長のDr. RenatoからDr. Kennettに大会旗が手渡され、次回は2016年にオーストラリアで開催されることが発表された。また、その夜に建築研究所国際地震工学部の研修修了生同窓会が会場近くのレストランで開催された。建築研究所の職員以外の講師にも参加が呼びかけられ、小生は今も講師を担当しているので夕食会に参加した。フィリピン在住の元研修生のほか、パキスタンやモンゴルからASCに参加している元研修生も一緒になった。

エクスカーションは、当初計画された昨年10月15日にボホール島で起きたM7.1の地震断層巡検は参加希望者数が少なくて中止になり、タール火山巡検だけになった。小生は以前行ったことがあるのと翌週に日本地震学会秋季大会があるので参加しなかった。

参加者の写真

Icebreakerで右からGary Gibson ASC会長(オーストラリア)フィリピン火山地震研究所Leyo Bautistaさん、同副所長のBartolomr Bautistaさん、インドのDr. J.R.Kayal、小生、左の3人は不明。

文責 石川有三

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