35th International Geological Congress (第35回万国地質学会議)参加報告

1. はじめに

2016年8月29日(月)〜9月2日(金)の5日間,南アフリカのケープタウンで開催された第35回万国地質学会議(35th IGC)に参加した.会場は,Cape Town International Convention Center (CTICC)であった(写真1, 2).地質調査総合センターからは,佃理事,斎藤(文),宮崎(一),大久保,内田,竹内,宝田,Bandibasの8名が参加した.今回のIGCは全体で約4200名が参加した.南アフリカ,中国,インドから多数の参加者があった.特に中国のCGSからは約100人の参加があった.

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写真1. IGC会場の入り口の様子

 

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写真2. 会場(CTICC)の外観.

2. GSJブース展示

GSJのブース展示では,東アジア地震火山災害情報図を始め,富士山火山地質図,熊本地震の緊急調査結果,南アフリカ鉱物資源調査,3D地盤図,地球化学図のポスター展示の他,ASTER, 土壌汚染リスク,鉱物によるガス吸着のハンドアウトも用意した.さらに,富士山の火山地質図や溶岩流の3D模型の展示を行った.多くの方が興味深く展示の見学に来られた(写真3).特に3D模型の展示は好評であった.GSJパンフやCCOP Stone Heritage Book, 日本の地質史等の配布も行った.毎日平均100名程度の訪問者があった.地震火山災害情報図も好評で,約10名の関係者に配布した(写真4, 5).

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写真3.GSJブース展示の様子.ウズベキスタン地質調査所一行から地質図を寄贈された.

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写真4.GSJブース展示の様子. 地震火山災害情報図も好評であった.

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写真5. アルゼンチンSEGEMARの研究者に地震火山災害情報図を寄贈.

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写真6.展示会場の様子.

3. 学会発表

会期中は,主にGeoinformation,Geohazards,火山関連のセッションに参加した.GeoinformationのSuper Sessionでは,各国の地質情報の整備に関する内容や,GEO, OneGeology, EPOS等のプロジェクト進捗等の内容についての講演があった.GEOでは,代表のBarbara Ryan氏が,オープンなデータ共有が,いかにEarth Scienceの進展や社会にとって重要であるかを示した(写真7). OneGeologyプロジェクトは現在119カ国,138機関,70の地質調査所が参加しており,300以上の地質図が公開されている.来年は10周年にあたり,3D Geologyなどの展開を図っている.EPOS(European Plate Observing System)は,各種の地球科学関連を共有化するプロジェクトであり,2023年までの計画で,ヨーロッパ各国の地質調査機関が連携して,地質関連情報,災害情報,資源関連情報の共有化を目指している(写真8).アジアで我々が進めているCCOP地質情報総合共有プロジェクトと類似したプロジェクトであるが,こちらは,地球物理関連の観測データの共有化にも力を入れている.8月30日には,地震火山災害情報図について口頭発表を行った.Geohazardsのセッションでは,各国の地震,火山,地すべり等の数多くの発表があった.9月1日に,G-EVERの地震火山ハザード情報システム,災害情報図の概要,火山災害予測支援システム,CCOP地質情報共有プロジェクトについて口頭発表を行った.火山関連のセッションでは,アフリカの火山の調査結果等の発表があった.ポスター会場では,熱心な議論が行われた.

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写真7. GEO(Global Earth Observation)プロジェクト代表のBarbara Ryan氏による講演.

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写真8. EPOSプロジェクトのスライド.

なお,会期中のプログラム,講演要旨は,下記のMy IGC Appサイトから閲覧,ダウンロードできる.

https://www.35igc.org/Verso/225/My-IGC-APP-smallbrought-to-you-by-AngloAmericansmall

 

4. 世界地質図委員会(CGMW), IUGS総会等の関連会議

会期中には数多くの関連会議や委員会が開催された.GSJ関係者が参加した会合は下記の通りである.

  •  8月29日18:00-21:00   CGMW Bureau Meeting
  •  8月30日18:00-19:30   CGI Meeting
  •  8月30日19:30-21:00   OneGeology Principal Members Meeting
  •  8月31日9:30-17:30     IUGS Council Meeting
  •  8月31日18:00-21:00   CGMW General Assembly
  •  9月1日8:30-17:15    IUGS Council Meeting
  •  9月1日18:00-20:00  SQS Business Meeting
  •  9月2日17:00-22:00  OneGeology Board Meeting
  •  9月3日9:00-17:00    CGI Meeting

8月29日に世界地質図委員会(CGMW)のBureau Meeting,31日にCGMW総会に地質調査総合センターから佃,宝田の2名で参加した.Bureau Meetingでは,まず委員のメンバー交代の予定が報告された.現在のPresidentであるPhilippe Rossi氏は,次の2018年のCGMW総会で代表を辞め,現在Secretary Generalを務めているManuel Publlier氏が代表に就任する予定である(写真9).その後,2014年からの各subcommissionからの進捗状況が報告された.ヨーロッパ代表のKristine Asch氏は,International Quaternary Map of Europe (IQUAME2500) プロジェクトについて発表を行った.北ユーラシア代表のOleg Petrov氏は,1:5M International Tectonic Map of Arctic (TeMar) プロジェクト等,アフリカ代表のF. Toteu氏は1:10M Seismotectonic Map of Africaと1:10M Geological Map of Arica等,アジア代表のJin Xiaochi氏は,1:5M International Geological Map of Asia (IGMA5000)のデジタルデータ完成,南アメリカ代表のC. Schobbenhaus氏は,1:1M Geological Map of South Americaや1:5M Tectonic Map of South America等(写真10),北中央アメリカ代表のM. Saint-Onge氏は,カナダとUSAのTeMarプロジェクトへの参加等,中近東代表のA. Saidiは1:5M International Quaternary Map of Middle Eastと1:5M International Map of Magmatism of Middle East, 南極地域代表のG. Leitchenka氏はTectonic Map of Antaracticaの改訂版,火成岩及び変成岩マップ代表のR. Oberhansli氏はMetamorphic Map of the Eastern Mediterranean,テクトニックマップ代表のI. Pospelov氏は,1:5M Tectonic Map of Asia, Tectonic Map of Northern-Central-Eastern Asia, 自然災害図代表の佃氏は,Eastern Asia Earthquake and Volcanic Hazards Information Map(東アジア地域地震火山災害情報図: 宝田が詳細を説明), 水文マップ代表のStruckmeier氏は,World Hydrogeological Mapping and Assessment Project (WHYMAP)について紹介を行った.

CGMWでは,今後VISIOTERRAという3Dソフトウェアで,CGMWのマップを閲覧できるようにするとともに,PDFで地質図をダウンロードできるようにする方針であることが決定された.31日の総会では,いくつかの地質図を貼りだすとともに,各国の活動内容を文書として取りまとめた.通常,総会は1日行われるが,今回は会場が確保できなかったとのことで,2時間程度であった.東アジア地域地震火山災害情報図は,CGMWの各委員から,大変詳細に取りまとめられており,素晴らしい成果であるとの評価を頂いた.次回のCGMW総会は2018年2月にパリで開催される予定である.

8月30日には,OneGeologyのPrincipal Member Meetingに内田,宝田,Bandibasの3名で参加した.Mat Harrison氏とTim Duffy氏の司会で,OneGeologyの活動内容,メンバー交代,今後の活動内容,財務状況等の報告,議論が行われた.また,9月2日に開催されたOneGeology Board Meetingには佃理事が参加された.

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写真9. CGMW代表のPhilippe Rossi氏(左)と事務局長のManuel Publlier氏(右)

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写真10. CGMW Bureau Meetingで南アメリカ地域の進捗を発表するC. Schobbenhaus氏

8月30日,9月1日に開催されたIUGS (International Union of Geological Sciences) のCouncil Meeting(総会)では,IUGSの各分野の活動報告が行われた.その中には,G-EVERがIUGS,日本学術会議共に仙台で開催した2013年の2nd G-EVER International Symposium and the 1st IUGS &SCJ International Workshop on Natural Hazardsと,そこで合意されたSendai Agreementの内容も触れられていた.また,8年後の第37回IGCについて,ドイツ・ロシア・トルコ・韓国によるプレゼンテーションがあり,投票の結果,韓国の釜山で開催されることが決定された(写真11).また,次回の第36回IGCは,4年後の2020年3月にインドのデリーで開催される.さらに,IUGSの新役員の立候補と投票が行われた.その結果,会長はQiuming Cheng氏(York大学),幹事長はStanley Finney氏(CSU), 会計幹事は北里洋(東京海洋大),副会長はKristine Asch氏(BGR, 写真12)とWilliam Cavassa氏(Bologna大)が新たに2016-2020の4年間の新役員となった.なお,理事には,Steve Johnston氏(Alberta大),Amel Barich氏(モロッコ)(以上2014-2018年任期),Edmond Nickels氏(GSL), Benjamin Mapani(ナミビア)(以上2016-2020年任期),Silvia Peppolomo氏(イタリア), Thierry Mulder氏(フランス)(以上2018-2022年任期)が選ばれている.

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写真11. IUGS総会でプレゼンを行う韓国代表.

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写真12. IUGS総会で立候補のプレゼンを行うKristine Asch氏(ドイツ地質調査所, BGR).

 

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